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学校から
「むごい教育」(再掲) 4月30日(金)
昨年7月1日に掲載した文章です。
戦国時代のお話です。江戸幕府を開いた将軍徳川家康は、松平家に生まれ「竹千代」と名付けられました。
幼いころの竹千代は、大名今川義元に人質として送られてしまいます。義元は、幼い竹千代の秀でた才能を一目で見抜き、「このまま成長していけば、いずれ面倒な相手になるに違いない」と考えるようになります。
そこで義元は、家臣に次のように命令したのです。
「竹千代に『むごい教育』をせよ」と。
その家臣は命令を忠実に守り、翌朝の日が昇る前から起こし常に駆け足で行動させ、粗末な食べ物しか与えず、一日中、剣術、武術、馬術、夜は遅くまで学問をさせ、毎日くたくたになるまでしごきました。
後日、義元は家臣に尋ねます。
「その後どうなっているか」
家臣が一部始終を「これほどむごい教育はありません」と得意げに報告すると、義元は烈火のごとく家臣を叱りました。
激しく叱責された家臣は「では、『むごい教育』とは、どのようにすればよいのでしょうか」と聞き返します。
義元は、次のように答えました。
「寝たいときはいつでもいくらでも寝かせよ。」
「学問がいやならやらせるな。」
「寒いときは、温かい服を何枚も着せてやれ。夏は暑くないように涼しくしてやれ。」
「贅沢なごちそうを好きなだけ食わせろ。」
「嫌がることはさせるな。好きなことだけをさせろ。」
「できる限り大事にしてやれ。」
どうしてこれが『むごい教育』なのでしょうか。
義元は最後に言いました。
「そうすれば、たいていの人間はだめになる。それが『むごい教育』だ。」と。
義元の本意を理解できず、家臣がきちんとした教育をして逆に鍛えてしまったがゆえに厳しく叱責されてしまった皮肉なエピソードです。
これは、様々な場所でよく使われる有名なエピソードです。
このことが何を示しているか、ぜひ話題にしてください。
本校の学校教育目標は「夢を持って学び、たくましく生きる児童の育成」です。
「たくましく」とは、「失敗にくじけない強い心」と本校では定義しました。
近年、社会人になって厳しさについていけずに仕事をやめてしまったり、うまく人間関係を作れずに引きこもってしまうケースが増えていると聞きます。そして、その状態が40歳や50歳になっても続いていくというのです。
これは、子供時代に失敗を経験せず、どうすれば自力で失敗から立ち直れるのか学ぶ機会を、まわりの大人が奪ってしまったことによることが大きいと言われています。
多くの人は失敗を恐れます。自分からすすんで失敗しようとはだれも思いません。
しかし、成功を目指してもうまくいかないのが世の中の常です。どうしたら失敗を生かせるか考えるのは一つの大きな学びです。
また、失敗させないようにしすぎると、失敗したときにそれを隠すようになってしまいます。それでは、失敗を乗り越えることなどできるはずがありません。はたして、それでいいでしょうか。
ちなみに、失敗を語る人に人々は安心し、成功を語る(自慢する)人から人々は離れていきます。
成功は大事ですが、失敗はもっと大事だと考えます。子供時代の失敗はいくらでもやり直しがききます。
「人は成功して覚え、失敗して学ぶ」という言葉があります。私の好きな言葉の一つです。
子供たちには、その両方をバランスよく経験させ、様々な学びを得てほしいと願っています。
(再掲はここまで)
年度始めにあたって、今後、学校と家庭が力を合わせて子供たちをたくましく育てていくために、ぜひ知っておいて欲しいと思い載せました。
多くの子供たちが生活する学校では、毎日いろいろなことが起こります。重大なトラブルに発展しそうなこともあります。学校では、教職員や指導員・支援員などの大人が、子供たちの様子をいつでも気にして、「あれ、ちょっとおかしいな」と感じたら声をかけ、早い段階で対処できるようにしています。そして、すぐに管理職に報告してきます。管理職は、「すぐに保護者に連絡しください」などの指示をします。内容によっては、全教職員で情報を共有し、その後は多くの大人の目で気にしながら注意して見ていきます。
大切なのは、学校と家庭で力を合わせるということです。お互いにすぐ連絡をとり合い、情報を共有することです。問題がなかなか解決しないケースの多くは、お互いに持っている情報が共有されていない時です。そして「家庭 対 学校」の構図になってしまうのです。これでは問題は解決しません。子供は絶対に良くなりません。常に「大人 対 子供」の構図にして、大人が力を合わせて子供を正しく導いていくことが大切です。「子供を良くしたい」という願いは一緒なのですから。 (文責 海寳)