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校長日記
地域の教育力を子どもたちの成長に
本校教育は「地域の教育力」に支えられています。今年3月に策定された第4期千葉県教育振興基本計画においても、基本目標の一つに「地域全体で子供を育てる体制づくり」が掲げられ、学校は地域と連携して教育を進めていくことが求められています。全国的に地域の教育力が以前に比べて低下してきていると言われるなかで、新島地区では様々な場面で子どもの教育を大切にする考えが受け継がれていることを感じ、私はいつもうれしい気持ちになります。
本校ではこの強みを活かし、地域の教育力を子どもたちの学びにつなげたいと考えています。
各教科では、地域の人材を活用した学習を積極的に取り入れています。生活科や社会科、総合的な学習の時間では、農業や商業、事業所等で働く人を訪ねたり、職業体験をさせていただいたりして学びを深めています。また、今年度はJA職員や米農家の方に稲作のコツを教えてもらいながら、バケツで苗を育てる体験に挑戦しています。子どもたちは登校すると自分の苗の成長や水の量を確認し、夏休み中は自宅で大切に育てながら、稲作の楽しさや苦労を体感しています。米づくりが盛んな新島地区の子どもならではの光景です。
クラブ活動では、地域の方が来校し、子どもたちに優しく編み物を教えてくださっています。また、地元の安全協会の方々には交通安全教室やマラソン大会などでご協力をいただき、ボランティアの方々は毎朝登校時に子どもたちを見守ってくださっています。子どもたちが安全に登校し、安心して学べるのは地域の方々のおかげです。
秋には「NPO法人香取市与田浦を考える会」のご好意で、3年生がコスモス畑の観賞と舟めぐりの体験をさせていただいています。子どもたちが体験する「与田浦コスモスまつり」や「加藤洲十二橋めぐり」は新島地区が誇る有名な観光資源ですが、友達や先生と一緒に学区を舟で巡る体験は、他校では味わうことができない本校ならではの学びであり、郷土愛を育む貴重な機会となっています。
日頃お世話になっている地域の方を学校にお招きして実施する「あきぞら音楽集会」も、音楽活動を通して子どもの主体性や協力性を育てる教育効果の高い活動ととらえています。今年度は地元の扇島地区で受け継がれている県指定無形民俗文化財の「おらんだ楽隊」の方々が特別に演奏していただくことになりました。子どもたちや保護者・家族、地域のみなさまが学校に集い、地域の伝統文化と触れ合う素晴らしい場です。子どもたちがどんな反応をするかわくわくしています。
「まちづくり協議会」主催のグラウンドゴルフ大会も11月に学校で開催されます。数年ぶりの開催で、三世代が交流してスポーツを楽しむイベントが復活します。「まちづくり協議会」の方々は、プランターにパンジーを植えて学校に寄贈していただいたり、まちづくり標語を子どもたちから募集して最優秀作品を横断幕にして正門近くに掲示していただいたりもしています。まさに学校の応援団です。
また、「扇島東組自然を守る会」のみなさんは、学校のフェンス添いに季節の花を植えたり、学校周辺の草刈りをしたりする活動を何年も続けてくださっています。いつも感謝の気持ちでいっぱいになります。
昨年度は地域の方からのお誘いで「星空観察会(天体観望会)」を学校で行いました。夜間の開催にも関わらず、当日はなんと約180名の方が来校し、冬の夜空を満喫しました。たくさんの地域の方々が夜の学校に集い、ロマンチックなひとときを過ごしたことは、子どもたちにとっても特別な思い出になったことと思います。
スポーツ活動も盛んで、地元の青少年相談員の方は、ヘルスバレーや綱引きを教えてくださっています。また、地域には少年野球チーム「水郷アニマルズ」があり、週末はたくさんの子どもたちが汗を流しています。甲子園球児を輩出する強豪チームですが、指導員の方から様々なことを教わる経験は、家庭・学校では学ぶことができないとても貴重な教育の場であると思います。地域の先生がスポーツを通して、子どもの健全な成長に大きな影響を与えていることを感じ、学校もチームを応援しています。
学校の校舎内には、子どもたちと保護者・家族・地域の方そして学校職員がそろって撮影した運動会の写真を大きく拡大して、廊下に掲示しています。素敵な写真を見るたびに、本校の子どもたちはたくさんの地域の方々の愛情に包まれて、のびのびと大きく成長していることを実感しています。
地域の教育力が、本校の子どもたちの成長に計り知れない影響を与えてくれています。全国各地で少子化が進んでいますが、地域と家庭・学校が一緒になって子どもを育てる『新島地区の教育力』が、今後も引き継がれていくことを強く願うばかりです。そして、素晴らしい地域の学校に勤務していることを誇りに思いながら、自校が地域コミュニティの核になれるようがんばっていきます。
充実した水泳学習になりました。
猛暑や豪雨など天候が不安定な日が続きましたが、おかげさまで全ての学年で計6回(12時間)の水泳学習を行うことができました。
水泳の授業では子どもが命を失う大きな事故が発生するおそれがあるため、職員は安全指導・安全管理に細心の注意を払いながら学習を進めます。そのようななかで、事故もなく予定された回数を実施することができ、どの職員もほっとしています。
学校で水泳学習を行う目的は二つあると考えています。
一つは、子どもの泳力を高めることです。水泳は、子ども一人一人がめあてを達成したり、達成に向けて練習に取り組んだりすることが楽しい運動です。本校でも一人一人がめあてをもち、自分の泳力を伸ばせるような練習を中心に授業を進めるようにしました。
もう一つの目的は、子どもが水の危険から大切な命を守る方法を学ぶことです。これは自分自身だけでなく、周りの人の命を救うためにも重要な学習です。授業ではプールでの約束ごとを毎時間確認しながら、全ての子どもが安全に注意して学習に取り組むことができました。また、7月8日には全学年を対象に着衣水泳を行い、水の危険を予測して行動することの重要性や、着衣のまま水に落ちた場合の対処法などについて学びました。
本校では水泳学習を充実させる手立てを講じています。
国の学習指導要領に基づいて、一般的に小学校では水泳学習を10時間程度位置づけることが多いのですが、本校では水泳の授業時間数を意図的に増やして実施しました。
一つの要因としては、新島地区にはたくさんの河川や水路があり、本校の子どもは他校の子どもと比べ、水の事故のリスクが高いと考えるからです。日頃から水泳学習以外でも、職員が共通認識をもち、水の事故防止に向けて指導に力を注いでいます。
その他にも、コロナ禍で水泳学習が中止になった子どもたちの泳力をより高めたいという職員の特別な思いがあることです。わずかな指導時間の増ですが、目の前で水泳学習に意欲的に取り組む子どもたちを見て、「できる限りのことをしたい」という職員の思いが、授業時間の増という形として表れています。
また、現在、全国の学校で水泳学習の課題が浮き彫りになっていますが、本校では様々な工夫をしながら水泳学習を継続しています。
学校プールの老朽化などを理由に、水泳学習ができない学校が全国で増えているようですが、幸いなことに本校のプールはまだ十分に使用できます。昭和54年に竣工されたプールで、補修や塗装等を重ねながら現在に至っていますが、まだまだ使用できそうな立派なプールです。
熱中症防止の観点から水泳を中止にする学校もあるようですが、本校では子どもがプールに水筒を持参して、水分補給をしながら活動しています。また、天候の状況をみて1校時目から水泳学習を行うなど、柔軟に授業を組み替えて、授業時間を確保するようにしています。
施設を管理する教員の負担についても報じられていますが、体育主任以外の教員を水泳指導のリーダーに位置づけ、5月の運動会と6月からの水泳学習に係る業務が同じ職員に重ならないよう校内体制を工夫しています。
さらには、水泳学習中の事故を防ぐために、今年度は新たに保護者の方にボランティアを募り、監視をお願いしました。計13名の方が手を挙げていただき、プールサイドで子どもたちの安全を見守ってくださいました。大人の目が増えたおかげで、私たち職員も安心して指導にあたることができました。暑い中でしたがご協力をいただき、職員一同、心より感謝しております。
今回の水泳学習を通じて子どもたちが大きく成長したことを感じています。保護者の皆様には、家庭での検温と健康観察、プールカードの記入や水着の準備等でご協力をいただき、ありがとうございました。
本校ではこれからも子どもたちの学ぶ意欲を大切にしながら、教育活動を進めていきます。引き続きのご協力をお願いいたします。
おかげさまで、すばらしい運動会になりました。
5月24日(土)に運動会を行いました。私は校長として、運動会は教育活動のなかで教育的意義が非常に高いと捉えており、学校経営で最も重きを置いている学校行事です。教職員も「子ども主体の運動会」を目指し、みんなで知恵をしぼりながら準備を進めてきましたが、元気いっぱいに活躍する子どもたちの姿と、その子どもたちを温かく応援してくださる保護者・家族の皆様や地域の方々の様子を見て、とてもすばらしい運動会になったことを実感しています。特別に土曜日に行わせていただいた行事でしたが、たくさんの皆様のご理解・ご協力に深く感謝しております。
時代の流れとともに学校の教育活動は形を変えていきますが、運動会の在り方も全国の学校で様々な新しい取組が試みられています。運動会の名称、目的、実施時期(春か秋か)、期日(土日か平日か)、日程(午前か終日か)、内容(赤組白組の対抗か、種目数)など、学校の選択肢は様々ですが、私は「自校の子どもの成長にとってどんな形がベストか」という視点で決定するようにしています。言い換えるならば、正解となる運動会の形は無く、校長の学校経営における運動会の位置付けや学校の実情によって、運動会の在り方は変わってきてよいものと考えています。そして、“新島小の子どもたちにとってベスト”と考えたものが、今回のような形での運動会です。
本校は今年度も、子どもが活躍する場をなるべく多く組み入れました。また、種目内容は個人で競うものと団体で競うもの、家族や来賓・高齢者の方と一緒に楽しめるもの、華やかなダンスや応援合戦など、子ども一人一人が運動会を通してたくさんの楽しさを体験し、十分に充実感や達成感がもてるようにしたいと考えました。さらには、熱中症の予防を考慮しながらの運営、スクールバスの円滑な運行、安全な登下校の仕方、保護者や地域の方々が参観しやすい会場設営、効率的な準備や後始末、雨天時の対応なども踏まえながら、総合的に計画・実施しました。
運動会後には、多くの保護者や地域の方々から、運動会の成果や子どもたちの成長などについてたくさんのお褒めの言葉をいただきました。子どもたちの活躍が、参観しているたくさんの人に元気と感動を与えてくれたようです。
また、運動会後の職員室は、「〇〇さんがよくがんばった!」「〇〇さんのご家族がとても喜んでいた!」など職員の会話で大盛り上がり。運動会での場面を一つ一つ振り返りながら、子どもたちの努力や活躍ぶりを笑顔で話す職員の姿がとても印象的でした。私たち職員も、子どもたちの努力や成長の様子を感じ、「大変だったけれど、がんばって良かった!」という喜びや達成感を味わいました。子どもたちはもちろん、保護者や地域の皆様のご協力のおかげです。本当にありがとうございました。
日頃から本校は「地域に愛されるあたたかい学校」を目指していますが、たくさんの方々が本校の教育活動を見守り、子どもたちの成長を支えてくださっていることを、改めて感じています。
子ども一人一人の確かな成長と、地域社会における学校の役割の大きさを感じたすばらしい運動会でした。これからも子どもたちのために、職員一同、がんばっていきます。
一人一人が安心して学べる子ども主体の学校に
満開の桜が咲く中、令和7年度がスタートしました。
春休み中の交通事故や水の事故もなく、全校児童がそろって元気に新学期を迎えることができたことを、とてもうれしく思います。
先日、小見川のいぶき館で「夢みる校長先生」という映画を観る機会がありました。全国各地の公立小中学校の校長が、子どもファーストな学校づくりを目指して取り組んでいる姿を集めた作品で、とても心地よい刺激をいただきました。どの学校の子どもたちも生き生きと活動していたことが最も印象的で、新島小の子どもたちのことを思い浮かべながら鑑賞させていただきました。
映画に登場した各校長の経営方針やリーダー性、学校の特色や取組等はそれぞれです。しかし、子どもファーストな学校づくりを目指す校長の考えや前例にとらわれない行動力が、子どもたちの表情や成長に結びついていることは共通していました。私も新島小の校長として、私なりのやり方で、子ども主体の楽しい学校を目指しがんばっていきたいと思います。
本校は昨年度から学校教育目標を「自分の良さや成長を実感できる子どもの育成」とし、より子ども主体の学校づくりを目指すこととしています。また、教職員は「子どもの多様性を理解し、一人一人の良さや可能性を引き出す」ことを共通の目的とし、力を合わせて子ども主体の教育活動を進めるよう努めています。
本校の教育方針が、学級・学校全体を引き上げていくことから、学校での様々な集団生活を通して、一人一人の子どもと向き合い、それぞれの良さや成長を認めながら、可能性を引き出していく視点にシフトしている形です。
私は、学校は社会の縮図であり、学校教育の役割は“人づくり”をすることと捉えています。教科等の授業や学校行事はもちろんですが、朝の登校から始まり、給食やたてわり掃除、自由に遊ぶことなどを通して、子どもたちは友達や上下学年、教職員などと関わります。そして、その全ての教育活動が子どもたちの様々な体験や学びとなり、いずれは社会で自立していく力につながると考えています。
子どもたちに「学校は、大人になる準備をするところだよ。」と話をしたり、保護者の方には「お子さんをなるべく学校に登校させてくださいね。」とお願いしたりしますが、それは、学校での集団生活で培う力が、将来の社会をたくましく生きていく力になると信じているからです。
厚生労働省と警察庁の発表によると、昨年の小中高生の自殺者数は529人で、過去最多となりました。原因・動機は、学業不振や友達との不和などの「学校問題」が最も多いとのことです。私は教育界の最重要課題と捉えています。
また、不登校の子どもの数も、全国で歯止めがかからない状況が続いています。どの子どもにも「自分を高めたい。学びたい。」という向上心がありますが、学校の現状としては、すべての子どもの期待やニーズに応えられていない表れであると感じています。
これらのことは学校教育全体の課題ですが、私は目の前の新島小の子ども一人一人と向き合いながら、子ども主体の学校にするために、これからも全力を注ぎたいと思います。
今年度の新島小の子どもたちは87名。一人一人が”地域の宝”です。全ての子どもたちが安心して楽しく学べる学校づくりに向けて、職員で知恵をしぼりながらがんばっていきます。
前年度と同様、保護者や地域の皆様の本校教育に対するご理解・ご協力をお願いいたします。
卒業証書授与式に込めた思い
3月18日(火)に卒業証書授与式を行いました。たくさんのご来賓・保護者・在校生そして職員に見送られながら、卒業生23名が母校を巣立ちました。
学校ではこれまでに様々な行事を行ってきましたが、やはり卒業式は特別です。本校は日頃から上学年と下学年の児童相互の心の絆が強い学校ですが、全校での校歌斉唱や、卒業生と在校生それぞれからの「お別れの言葉」や「お別れの歌」がとても素晴らしく、圧巻で感動的でした。式典を通して卒業生は卒業の喜びを味わい、在校生はこれまでの練習の成果を発揮した達成感と、厳粛な雰囲気で静かに流れていく卒業式の素晴らしさを体感することができたことと思います。
職員も卒業式に向けて、指導や準備に力を入れてきました。「今年度は呼びかけをやろう」という話が職員間で持ち上がり、在校生の呼びかけは担当が言葉を一から考え、卒業生の呼びかけは卒業生が自分たちで言葉を考えて作り上げました。歌は「どんな歌にしようか」と担当が児童の意向を聞きながら曲目を決め、在校生は二部合唱にもチャレンジしました。
また、保護者控室を図書室に設置し、式典前には職員が作成した映像を保護者の方に観ていただきました。1年生の頃からの写真をふんだんに使用した担当手作りの映像で、6年間の成長を改めて感じていただけたかと思います。
他にも、卒業生の呼びかけや歌で一人一人の顔が見えるよう「ひな壇」を作成したり、教室や廊下等の掲示や飾り付けを工夫したり、体育館や控室を花でいっぱいにしたりと、職員みんなでアイディアを出し合いながらがんばって準備を進めました。
式典の1週間前には、数名の卒業生や職員等が新型コロナに感染するピンチを迎えましたが、臨時休校の緊急対応をさせていただいたり、登校を再開しても式典練習を中止したりして、感染の広がりを食い止めることを最優先して対処しました。卒業生がそろったのは卒業式の前日でしたが、6年担任が児童一人一人の気持ちに寄り添いながら親身になって対応してくれました。
全職員が一丸となって卒業式に臨むことができたのは、職員一人一人に「卒業生のために」という強い思いがあったからです。私たちの仕事は子どもたちに愛情を注ぐことですが、その注ぎ方は様々であり、その一つの形が今回の卒業式であったと思います。私にとっても卒業生とは1年間のかかわりでしたが、素晴らしい子どもたちと出会い、一生忘れられない最高に楽しい1年間となりました。
これまでの指導を含め、至らない点も多々あったと思いますが、保護者の皆様には6年間にわたる本校教育へのご理解・ご協力をいただき、深く感謝申し上げます。
卒業生23名の今後のご活躍を、心よりお祈りしています。