日誌

心にしみる 金言「現実は正解なんだ!」

 主人公の立川談春。高校を中退して立川談志に弟子入りし、住み込みで新聞配達をしながら落語の修行に励んでいる。

  そんなある日、談志から稽古をつけてもらっている弟弟子(おとうとでし)である志らくの噺(はなし)を聞き「こいつ・・・うまい」と談春は脱帽する。
 談志が志らくの噺を中断し、「よし、よく覚えたな。筋も悪くねえ」とほめる。ここで談志が、志らくの噺のネタであるやきもちについて談春に語る。

 「おまえにな、やきもち、すなわち嫉妬とは何かを教えてやる。いいか、己が努力行動を起こさずに、相手の弱みをあげつらって自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬というんです。本来なら相手に並び、抜くための行動、生活をすればそれで解決するんだ。しかし人間は、なかなかそれができない。嫉妬している方が楽だからな。けどな、よく覚えておけ。現実は正解なんだ。時代が悪いの、世の中が悪いのと言ったところで、状況は何も変わらない。現実は現実だ。その現状を理解し、分析しろ。そこには必ず、なぜそうなったかという原因がある。それが理解できたら、あとは行動すればいいんだ。そういう状況判断もできないような奴を、俺の基準では馬鹿という。」(「あかめだか」立川談春著)

 この嫉妬についての談志の言葉は、私の心にもしみた。確かに、不遇な現状に文句を言っているだけでは何も解決しないし、状況が好転することもない。この「現状を理解し、分析する。そしてこうなった原因を認識し、行動を起こす。」これを冷静かつ謙虚に実行できれば、光明も見えてくるのではないだろうか。
                                林 俊幹