校長日記

生きる力を育む「あ・そ・べ」の合言葉

 学校は、子どもたちが将来社会で生きていくための土台となる力を身に付けるところです。その目的に至るまでに、子どもたちが学ぶことは無限にありますが、その中で特に大切にしたいことを、本校では「あ・そ・べ」というわかりやすい合言葉で子どもたちに伝えながら、子どもたちの生きる力を意図的に育てています。

  「あ・そ・べ」の「あ」はあいさつ、「そ」は掃除、「べ」は勉強、そして友達と遊ぶことです。

 

  たとえば、掃除の指導です。本校では、働くことは社会で自立していく上でとても大切なことととらえ、どの職員も子どもたちに清掃にしっかりと取り組ませたいという願いをもっています。そのために異学年グループによる「たてわり清掃」を取り入れ、全職員が共通認識のもと、①身なりを整え ②上学年と下学年が協力して ③話をせずに(黙働) ④目と手を働かせて隅々まで という指導を進めています。

 また、清掃時に流れる音楽を子どもが落ち着いて取り組める曲に変更したり、清掃で使用する用具を見直して効率良くきれいにできるよう改善したり、職員が率先して身なりを整えたりするなど、指導の在り方を工夫しながら、継続して取り組んできました。私たち職員の「子どもたちに実践力を付けたい」という指導のこだわりです。

 このことで、子どもたちの清掃活動は、以前に比べ見違えるほど良い取組となりました。子どもの実践の姿として表れるまでにはかなり長い時間がかかりましたが、職員が継続して指導にあたってきた成果であると考えています。

 

 子どもの気持ちを大切にしながら指導を進めてきたことで、子どもが主体的に行動できるようになってきたことも成果として挙げられます。

 たとえば、あいさつの指導です。あいさつはコミュニケーションの一つとして大切な生きる力ですが、社会の変化とともにその在り方が変わってきています。学校ではこれまで「元気よく」「大きな声で」「相手より先に」というあいさつ指導をよくしたものですが、その指導方法は今の子どもたちには合わないような気がします。どちらかと言えば、今の子どもたちは、教師主導の指導に対して「やらされている」と感じる傾向が強く、心の底から共感して自ら取り組めるようにしないと、子どもの自主的な行動には結びつかないと考えています。

 そのような現状のなかで、「どうすれば自分で気づき、進んであいさつができるようになるだろうか」と、校長としてずいぶん頭をひねりました。そこで、一つの試みとして、いつも進んであいさつをしていた子どもに声をかけ、私を含めた3名で「あいさつがんばり隊」を立ち上げてみました。そして、昨年度の後期のスタートとなる始業式で全校児童に隊員を紹介したり、写真を廊下に掲示したりしてみました。すると、「私も仲間に入れてください!」と自ら隊員に加わる子どもが生まれ、仲間の輪が次第に広がり、1月には何と全校児童が隊員になりました。小さな動きがいつの間にか学校全体の大きな動きに波及した形です。

 学校生活を通して子どもたちから学ぶことは多々あるのですが、子どもたちにあいさつを強制するのでなく、あいさつを進んで行う子どもが自然に増えていったことに驚きました。従来のような教師主導の指導でなく、子どもの気持ちや気づきを大切にしながら、自然な形で子どもの心に受け入れられたことに、私自身が学ばせていただいた出来事でした。

 「あいさつがんばり隊」が発足して1年半くらい経った今でも、子どもたちはよくあいさつをしています。あいさつの言葉や表情、声の大きさは様々ですが、どの子のあいさつも温かい気持ちが伝わってくる素敵なあいさつです。スクールバスの添乗員さんや地域の方などからも、子どもたちのあいさつについて、たびたびお褒めの言葉をいただくようにもなりました。子どもたち一人一人があいさつをすることの大切さに気づき、進んで実践してくれていることをとてもうれしく感じています。

 

 私が新島小に赴任して1年9か月が経ちましたが、この期間に子どもたちの「あ・そ・べ」の取組がずいぶん変わり、一人一人が大きく成長していることを実感しています。そして、今振り返ってみると、私たち職員が知恵をしぼり継続して努力を重ねてきたことが、子どもたちの力として少しずつ実を結んできていることを感じています。

  「あ・そ・べ」の合言葉で、子どもたちは人として成長しています。そして一人一人の成長が、私たち教職員の喜びややりがいにつながっています。 

 本校職員はこれからも子どもたちの将来を見据え、一人一人の気持ちを大切にしながら、よりよい教育活動の在り方を求め続けていきます。